第10課 複文の構成①
──様々な複文の構造①
ここまでは、主語・述語が一つずつの「単文」の構造について解説してきた。しかし、実際の文章では、単文よりも、複数の単文形式が結びついた「複文」(国文法でいうところの複文とは異なる)の方が実はずっと多く使われている(中国語では「単句」「複句」という)。
漢文の場合、句読点のような文の区切りとなる記号を用いる習慣がないため、単文と複文の区分についても明確な判別基準がないのだが、論理的な記述や、修辞的に効果の高い叙述をしようと思えば、やはりある一定の関係性をもった複数の単文を組み合わせて表現することにはなる。その際の、特に関係性が密接で、一つの文として取り扱う方が理解しやすいものを複文と称すると考えれば良いだろう。
そのような複文の例を見てみよう。
不入虎穴、不得虎子。[コケツにいらずんば、コシをえず](虎の穴に入らなければ、虎の子は得られない。)
という文は、A「不入虎穴」(虎穴に入らない)と、B「不得虎子」(虎子を得ない)の二つの単文形式の組み合わせにより構成されているが、このように複数の単文形式の構成要素が結びついてできているのが複文である。この文のA・B部分のような、複文を構成する単文形式をここでは「節」と呼ぶこととし、以下、文が二つの節からなる場合には、前後の節をそれぞれ「前節」「後節」と称して説明してゆく。
上の例文は、前後二つの単文形式のみから成り、両節の間の関係を明示するような要素は含まれていないが、場合によっては、節と節の間の関係をはっきり示すために、接続詞や副詞などの要素が加えられる。
①若薬弗瞑眩、厥疾弗廖。[もしくすり メイゲンせずんば、そのやまい いえず](薬がめまいするほど強くなければ、その病は治らない。)
②王如知此、則無望民之多於隣国也。[オウ もしこれをしれば、すなわちたみのリンコクよりおおきをのぞむなかれ](王がもしこのことを知ったなら、国民が隣国より多いことを望んではなりません。)
①の例では、前節Aの前に接続詞「若」を加え、仮定条件節であることを明示している。②の例では、前節Aの主語の後に接続詞「如」を置いて仮定条件節であることを示している上に、後節Bの前にも接続詞「則」を置き、以下が結果節であることを明示している。つまり「若」「如」「則」などの接続詞は、節と節の間の意味上の相関関係を明示する働きを担っているのである。
このような、節の間の相関関係を明示する機能を果たす接続詞や副詞などの語法成分は、「相関語句」と呼ばれる。これは、単独で用いられることもあるが、②の例のように、二つ以上が組み合わされて用いられる場合、つまり一種の「呼応表現」の形をとる場合もある。
これらの「相関語句」や「呼応表現」は、節と節の相関関係を示すいわば「標識」とも言えるもので、文の構造を把握する上で極めて重要である。以下には、論理上、修辞上において採られる相関関係の類型(パターン)と、その類型ごとに用いられる主要な「相関語句」や「呼応表現」について、例文を挙げつつ紹介してゆく。
なお、呼応表現の例は、ここに挙げたものはごく一部に過ぎず、それぞれの類型において、様々な相関語句が組合せられて数えきれないほどのパターンがあり得る。全て挙げることはできないし、挙げたとしても膨大すぎてかえって検索の手間がかかり過ぎるだろう。そういうわけで、ここに全てを網羅するよりは、以下の最小限の例を参考にしながら、文の構造理解に対する感覚を磨いて行くようにしていただければと思う。
◆複文の類型と相関語句のいろいろ
複文における節と節の間の意味上の相関関係は多様だが、幾つかの形式に分類することができる。以下に、その相関関係の類型と、それぞれの類型で使用される「相関語句」や「呼応表現」について主なものを例示する。
●1.並列関係〔A、またB〕
複数の節が別々に何かの事柄について述べたり、一つの事柄について幾つかの面から何かを述べたりする構文。
■相関語句を用いない例
①君子喩於義、小人喩於利。[クンシは ギにさとく、ショウジンは リにさとし](君子は正義に敏感で、小人は利益に敏感だ。)
■相関語句:接続詞「而」(しかして/…て)=「そして」、「…で」(※前節と後節の間に置く。)
②秦強而趙弱。[シンはつよくして、チョウはよわし](秦は強くて趙は弱い。)
■相関語句:接続詞「且」(かつ)=「…であり、また…」「…しながら…」(※語句と語句、節と節の間に置く。)
③盾闘且出。[トン たたかい、かつ いづ](盾は戦いながら逃れ出た。)
■相関語句:副詞「亦」「又」(また)=「また」
④左丘明恥之、丘亦恥之。[サキュウメイ これをはづ、キュウもまた これをはづ](左丘明はそれを恥じた、丘(わたし)もまたそれを恥じる。)
■相関語句:判断詞「非」(…にあらず)=「…ではなく…だ」
⑤非択而取之、不得已也。[えらびてこれをとるにあらず、やむをえざるなり](選んでそれを取ったわけではない、やむを得なかったのだ。)
■呼応表現:「或~或~」型(あるいは…あるいは…)=「ある場合は…ある場合は…」(※列挙の構文。)
⑥或飢餓於山谷、或沈溺於水泉。[あるいはサンコクにキガし、あるいはスイセンにチンデキす](ある者は山の中で飢え、ある者は水に溺れる。)
■呼応表現:「則~則~」型(…はすなわち…、…はすなわち…)=「…は…で、…は…だ」(※列挙・対比の構文。)
⑦動則左史書之、言則右史書之。[ドウは すなわち サシ これをショし、、ゲンは すなわち ユウシ これをショす](行動は左史が記録し、発言は右史が記録する。)
■呼応表現:「且~且~」型(かつ…かつ…)=「…しながら…」
⑧李陵且戦且引。[リリョウ かつ たたかい、かつ ひく](李陵は戦いながら退却した。)
■呼応表現:「皆~独~」型(みな…、…のみひとり…)=「みな…なのに、…だけは…だ」(※対比の構文。)
⑨衆人皆酔、而我独醒。[シュウジン みな よい、われのみ ひとり さむ](人々はみな酔っているのに、自分だけは醒めている。)
●2.連続関係〔A、それからB〕〔A、するとB〕
連続して起こる動作・行為などについて、順番に述べる構文。
■相関語句を用いない例
①秦王怒不許。[シンオウ いかりてゆるさず](秦王は怒って許さなかった。)
■相関語句:副詞「即」「便」(すなわち)=「すぐに」、「そこで」
②長子至、即立為皇帝。[チョウシ いたり、すなわち たちて コウテイとなる](長子が来ると、すぐに立って皇帝となった。)
■相関語句:副詞「卒」「終」(ついに)=「とうとう」「結局」/副詞「遂」(ついに)=「そのまま」、「とうとう」
③頭足異処、卒為天下笑。[トウソク ところをことにし、ついに テンカのわらいとなる](頭と足が切り離され、とうとう天下の笑い者となった。)
④一見李之才、遂従而受学。[ひとたび リシサイをみ、ついに したがいて ガクをうく](一度李之才に会うと、そのまま弟子となって教えを受けた。)
■相関語句:接続詞「乃」「則」(すなわち)=「そこで」「すると」
⑤相国従其計、高帝乃大喜。[ショウコク そのケイにしたがい、コウテイ すなわち おおいによろこぶ](相国はその計画に従い、皇帝はそこで大いに喜んだ。)
⑥其子趨而往視之,苗則槁矣。[そのこ はしりてゆきてこれをみれば、なえ すなわち かれたり](息子が走って行って見てみると、苗は枯れていた。)
■相関語句:接続詞「既」「已」(すでに)=「…すると」(※前節に使用。)
⑦管仲既用、斉桓公以霸。[カンチュウ すでにもちいられ、セイのカンコウ もってハたり](管仲が用いられると、斉の桓公はそれで霸者になった。)
■相関語句:接続詞「然後」「而後」(しかるのちに)=「…してから」(※後節に使用。)
⑧解約束誓盟、而後入邑。[ヤクソクをとき セイメイし、しかるのちに ユウにいる](軍令を解き、君への忠誠を誓ってから都へ入った。)
■呼応表現:「先~然後~」「先~而後~」型(まず…、しかるのちに…)=「まず…して、それから…」
⑨先飲三升清酒、然後言之。[まずサンショウのセイシュをのみ、しかるのちに これをいう](まず三升の清酒を飲んで、それから話をする。)
●3.累加(抑揚)関係〔A、そのうえB〕〔A、ましてBはなおさらだ〕
前節で述べた事柄に、後節で更に付け加えて何かを述べる構文。
■相関語句:接続詞「且」(かつ)=「…の上に」、「…すら」(※累加型では後節、抑揚型では前節に使用。)
①公語之故、且告之悔。[コウ これがことをかたり、かつ これがくいをつぐ](公はその事情を語った上に、それについての後悔を告げた。)
②身且不愛、安能愛君。[みすら かつ アイせず、いずくんぞ よくクンをアイせんや](自分の身すら愛さないのに、どうして君主を愛するはずがあろうか。)
■呼応表現:「既~又~」型(すでに…また…)=「…である上に、さらに…だ」
③既能治近、又務治遠。[すでによくちかきをおさめ、また とおきをおさむるにつとむ](近くをちゃんと治めている上に、さらに遠くを治めるよう努める。)
前節に、ある内容や状況に限定されないことを表す、否定の語と限定の副詞を組み合わせた言葉、「不惟」「不唯」「非特」「非唯」などを置き、後節には「又」(さらに)「且」(なおかつ)などを加えることにより、累加関係を明示する構文がある。(「不惟~、又~」型など。組合せにより様々なバリエーションがある。)
また、この形の構文における否定の副詞を反語の副詞に差し替えた「豈徒」「豈独」「豈惟」(どうして~だけだろうか)などを前節に置いて、限定されないことを反語によって表し、後節には「又」「且」などを加えて累加関係を明示する構文もある。(「豈徒~、又~」型など。これも様々なバリエーションがある。)
■呼応表現:「非特~又~」「非徒~又~」型(ただに…のみにあらず、また…)=「…だけでなく、さらに…だ」
④彼非特不服也、又大不敬。[かれはただにフクせざるのみにあらず、また おおいにフケイなり](彼は従わないだけでなく、大いに無礼である。)
■呼応表現:「非但~亦~」「不但~亦~」型(ただに…のみにあらず(ならず)、…もまた…)=「…だけでなく…もまた…だ」
⑤非但君択臣、臣亦択君。[ただにクン シンをえらぶのみにあらず、シンもまた クンをえらぶ](君主が臣下を選ぶだけでなく、臣下も君主を選ぶ。)
■呼応表現:「不唯~〔雖〕~亦~」「非唯~〔雖〕~亦~」型(ただ…のみ…ならず(にあらず)、…〔といえども〕また…)=「…だけでなく、…であっても…だ」
⑥不唯小国之君為然也、雖大国之君亦有之。[ただ ショウコクのクンのみ しかりとなさず、タイコクのクンもまた これあり](小国の君主だけがそうなのではない、大国の君主であってもそういうことはある。)
■呼応表現:「豈惟~又~」型(あにただに…のみならんや、また…)=「どうして…だけだろうか、さらに…だ」
⑦豈惟怠之、又従而盗之。[あに ただに これをおこたるのみならんや、また したがいて これをぬすむ](どうしてただ職をなまけるだけだろうか、さらに職位を利用して盗みさえもするのである。)
抑揚構文とは、前節には意味の軽いもの、程度の低い内容や条件を述べて(いったん抑えておき)、後節では意味の強いもの、程度の高いものを述べ(もち揚げ)て強調する構文をいう。前節に「且」「尚」「猶」などを置くことが多い。やはり様々なバリエーションがある。
■呼応表現:「~尚~況~〔乎〕」「~猶~況~〔乎〕)」型(…すらなお…、いわんや…)/「~且~況~〔乎〕」型型(…すらかつ…、いわんや…)=「…ですら…だ、まして…はなおさらだ」
⑧庸人尚羞之、況于将相乎。[ヨウジンすら なお これをはづ、いわんや ショウショウにおいてをや](凡人ですらそれを恥じる、まして大将や大臣ならなおさらだ。)
■相関語句:副詞「豈」(あに)/「安」(いずくんぞ)=「(ましてや)どうして…か」(※抑揚文の後節に、「況」に加えて、あるいは「況」に代えて反語の副詞を入れる場合がある。)
⑨臣死且不避、卮酒安足辞。[シン シすらかつ これをさけず、シシュ いずくんぞジするにたらんや](私は死すら恐れないのに、どうして大杯の酒など辞退するに足りようか。)
■呼応表現:「雖~猶~〔而〕況~」「自~猶~〔而〕況~」型(…といえどもなお…、〔しかるを〕いわんや…)=「…であっても…だ、まして…はなおさらだ」(※抑揚文の前節に、接続詞「雖」「自」を用いた形。この場合の「自」は「いえども」と読む接続詞の用法。)
⑩雖舜禹猶亦困、而又況乎俗主哉。[シュンウといえども なお また くるしむ、しかるをまた いわんや ゾクシュをや](舜や禹であってもやはりくるしむのだ、まして平凡な君主ならばなおさらだ。)
⑪自古大聖猶懼此、況臣莽之斗筲。[いにしえのタイセイといえども なお これをおそる、いわんや シンモウのトショウをや](いにしえの大聖人でさえこれを恐れたのだ、ましてわたくし王莽のごとき浅はかな者ならなおさらだ。)
●4.選択関係〔AかBか〕〔AよりむしろB〕
ある内容を述べる複数の節を並べ(比べ)、いずれか一つを選択する(ことを求める)構文。
「選択疑問文」の形をとるものには次のような例がある。
■相関語句:助詞(疑問の語気助詞)「邪」「乎」「与」「歟」(か)など=「…か」(※句末に置く。)
①王者貴乎、士貴乎。[オウジャ たっときか、シ たっときか](王者が貴いのか、士が貴いのか。)
■相関語句:接続詞「抑」「且」(そもそも)=「それとも」(※前節と後節の間に置く。「抑」は前節の初めに置かれる場合もある。)
②求之与、抑与之与。[これをもとめしか、そもそも これをあたえしか](それを(自分から)求めたのか、それとも(他人が)それを与えたのか。)
③抑固窶邪、亡其略弗及邪。[そもそも もとよりロウなるか、むしろ それ リャクのおよばざるか](もともと心が狭くて貧しいためなのか、それとも考えが及ばないためなのか。)※この場合の「亡」は「むしろ」と読み選択を表す接続詞の用法。
■相関語句:接続詞「将」(はた)=「それとも」(※前節と後節の間に置く。)
④秦歟漢歟、将近代歟。[シンか カンか、はた キンダイか](秦か漢か、それともこのごろのことか。)
前後両節に、接続詞「寧」および疑問の語気助詞「乎」などを伴った選択肢を並べ置いて選択関係を示す場合がある。「寧~乎、寧~乎」の場合、訓読は「むしろ~か、むしろ~か」となり、「寧~乎、将~乎」の場合、訓読は「むしろ~か、はた~か」となる。
■呼応表現:「寧~乎、寧~乎」型(むしろ…か、むしろ…か)=「…か、それとも…か」(※一般的には後節を選択する。
⑤此亀者寧其死為留骨而貴乎、寧其生而曳尾於塗中乎。[このかめなるものは むしろ それ シしてほねをとどめて とうとばるるをなさんか、むしろ それ いきて おをトチュウにひかんか](このカメというものは、死んで骨を残して貴ばれるのがよいか、それとも生きて尾を泥の中に引きずっているのがよいか。)
前節に否定の判断詞「非」を置き、後節に「則」「必」などを置いて、選択関係を明示する場合がある。また、前節に「非」、後節に疑問代詞を置いて選択の対象を問う形式にしながら、実質的には答えを求めない(選択の余地がないことを強調する)反問の表現を用いる場合がある。
■呼応表現:「非~則~」型(…にあらざれば、すなわち…なり)=「…でなければ…だ」
⑥天地之道、非陰則陽。[テンチのみちは、インにあらざれば すなわち ヨウなり](天地の事物のあり方は、陰でなければ 陽だ。)
■呼応表現:「非~如何」型(…にあらずしていかんぞ)/「非~而何」型(…にあらずしてなんぞや)=「…でなくて何であろうか」
⑦此非弑君如何。[これクンをシイするにあらずしていかんぞ](これは 君主を殺害するのでなくて 何であろうか。)
⑧親非父母而何。[シンとはフボにあらずしてなんぞや](親とは 父母でなくて 何であろうか。)
選択関係の一種だが、特に前節を主節として、前後の比較において前節の選択を主張する構文として、「取捨構文」と呼ばれるものがある。この構文では主節に接続詞「寧」や判断詞句「不如」などを置いて採用する内容を示し、従節には採用しない内容を「不」・「無」等の否定の語や接続詞「与」(…よりも)を付して示す。
■呼応表現:「与~寧~」型(…与(より)は、むしろ…)=「…するくらいなら…したい」(※「寧」は接続詞。)
⑨与人刃我、寧自刃。[ひとの われをジンせんよりは、むしろ みずから ジンせん](人が私を殺すくらいなら、むしろみずから死のう。)
■呼応表現:「寧~無~」型(むしろ…も、…なかれ)=「…はしても…はするな」
⑩寧為鶏口、無為牛後。[むしろ ケイコウとなるも、ギュウゴとなるなかれ](鶏のクチバシにはなっても、牛の尻にはなるな。)
■呼応表現:「与〔其〕~不如~」型((その)…与(より)は、…にしかず)=「…よりは…する方がましだ」
⑪与其受辱以生、不如死。[その はずかしめをうけて もって いくるよりは、シするにしかず](辱めを受けて生きるよりは、死んだ方がましだ。)
●5.転折関係〔AしかしB〕
前節の述べる内容に対して、後節でそれと反対のことを述べる構文。
■相関語句を用いない例
①晏子長不満六尺、身相斉国。[アンシ チョウは リクセキにみたざるも、みは セイコクにショウたり](晏子は身長は六尺に満たないが、身分は斉国の宰相である。)
■相関語句:接続詞「而」「然」(しかるに/しかれども/…も)/「然而」(しかりしこうして)=「しかし」「だが」(※後節の初めに置く。)
②千里馬常有、而伯楽不常有。[センリのうまは つねにあれども、ハクラクは つねにはあらず](千里の馬は常にいるが、伯楽は常にいるわけではない。)
③人君莫不欲安、然而常危。[ジンクン やすきをほっせざるなく、しかりしこうして つねにあやうし](君主で安泰を望まない者はいないが、常に危うい。)
■相関語句:接続詞「但」「顧」(ただ)=「ただし」(※後節の初めに置き、前節の内容に留保や限定を付ける。文末に限定の語気助詞「耳」「爾」などが呼応することが多い。)
④人体欲得労動、但不能使極爾。[ジンタイは ロウドウをえんとほっするも、ただ きわめしむるあたわざるのみ](人の体は運動したいと求めるものだが、ただし極限まで酷使するわけにはいかない。)
⑤此在兵法、顧諸君不察耳。[これヘイホウにあり、ただ ショクン サッせざるのみ](このことは兵法に載っているのに、ただ君たちがよく見ていなかっただけだ。)
■相関語句:副詞「却」(かえって)=「かえって」「反対に」(※後節に置く。)
⑥人攀明月不可得、月行却与人相隨。[ひとの メイゲツによづるは うべからざるも、ゲッコウ かえって ひととあいしたがう](人が月に登ることはできないが、月の歩みはかえって人について来る。)
■相関語句:接続詞「乃」(すなわち)=「かえって」(※後節に置く。)
⑦当改過自新、乃益驕溢。[まさに あやまちをあらため みずからあらたにすべきに、すなわち ますます キョウイツす](過ちを改めて心を入れ換えるべきところを、かえってますますおごりたかぶった。)